平成17年1月20日
がん医療水準均てん化の推進に関する検討会
座長 垣添忠生・国立がんセンター総長殿
拝啓
新春の候、時下ますますご清祥の段、お喜び申し上げます。
先生におかれましては、厚生労働省の「がん医療水準均てん化の推進に関する検討会」の座長として、「現在の最高のがん医療を日本中に広める」ために、ご尽力いただき厚く御礼申し上げます。
しかし残念ながら検討会では、これまでがん患者の声を申し上げる機会がございませんでした。
当会は、これまでがん治療専門医の育成を以下の通り各機関に求めて参りました実績がございます。
◆平成15年5月26日
坂口力厚生労働大臣(当時)と面会し、世界的標準治療薬の早期認可と臨床腫瘍医の育成に関する「質問書」【参考資料1】を手渡す。
◆平成15年7月 2日
厚生労働省医薬局書記室から、以下の内容を含む回答【参考資料2】が届く。
「臨床腫瘍医については関連学会でも認定医として育成することを予定しているが、第3次対がん10か年戦略の中でも課題の一つとして検討していく必要があると考えている」
◆平成16年1月27日
坂口厚生労働大臣(当時)と面会し、「がん治療に関する要望書」【参考資料3】を手渡し、がん医療水準の地域格差是正を求める。この場で大臣は、地方の医師が最先端医療を学べる研修制度を設けようと考えていると回答【参考資料4】。
◆平成16年3月12日
第2回日本臨床腫瘍学会総会・シンポジウム2「臨床腫瘍医育成の展望」に、当会の佐藤均会長が招かれ、がん患者の立場から臨床腫瘍医の育成を求める講演を行う。
◆平成16年5月23日
河村建夫文部科学大臣(当時)と面会し、「臨床腫瘍医の育成に関する要望書」【参考資料5】を、また同席した「市民のためのがん治療の会」は、「放射線治療医の育成並びに放射線治療の基礎知識普及に関する要望書」【参考資料6】を提出。この場で大臣からは、「『医学教育のためのモデル・コア・カリキュラム』を作成し、化学療法や放射線治療を学生が必ず学ぶべきものと位置づけ、本年から各大学がこのカリキュラムを導入し始めた」との説明を受ける。
上記の活動を行う切っ掛けとなりましたのは、日本には、外科医以外のがん治療の専門医が少ないという現実を知ったことからでした。
アメリカに9,000人いると言われる臨床腫瘍医(腫瘍内科医)は、日本には500人ほどしかおらず、また日本放射線腫瘍学会の認定医も420人ほどで、アメリカと比べて一桁少ないと言われております。
全国に、がん診療拠点病院という「箱」が作られても、そこに専門医が配置されなければ、「現在の最高のがん医療」を受けることはできません。
もちろん厚生労働省や文部科学省が、がん治療専門医の育成に取り組み始めたことを私たちは高く評価しております。しかしその内容を見ると、長期戦略的なものが多いと思われます。
私たち現在、がんと闘っている患者にとっては、一刻も早く専門医を地元に配置してほしいのです。そこで、私たちは長期戦略と並んで、専門医を短期的に育成・配置するための戦略をご提案させていただきます。
また、この間、日本臨床腫瘍学会総会や、放射線品質管理士講習会などで耳にした現場の医師たちからの声として多かったのが「専門医を配置するためには、それに見合う『診療報酬』を与えてもらわなければ不可能だ」というものでした。
そこで私たちは、専門医を医療現場にしっかりと配置させるために、それに見合う「診療報酬」きちんと与えることを求めることにしました。
当会といたしましては、こうしたがん患者の立場から意見を検討会に反映させていただきたく、ここに要望書を提出させていただきます。ご参考にしていただければ、幸いに存じます。
敬具
癌と共に生きる会
会長 佐藤 均
(1)腫瘍内科医、および放射線腫瘍医の育成のめの要望
1-A:長期戦略
① 長期的な戦略として、各大学医学部に化学療法や放射線によるがん治療をきちんと学ぶことができる「腫瘍学」を開設させること
② そのための予算措置を保証すること
③ 学生の意識喚起を促すため、医師国家試験において、腫瘍学に関する問題を増やすこと
④ 医学生卒業後の研修において、化学療法と放射線治療の臨床実習を義務づけること
1-B:短期戦略
① 各県のがん診療拠点病院の医師を国立がんセンターに派遣し、学ばせること
② 派遣費用の予算措置を保証すること
③ 派遣期間中の人員補填についても予算措置を講じること
④ 派遣に応じない拠点病院は、その地位を取り下げること
(2)がん治療専門医の認定とその正当な報酬のための要望
① 日本癌治療学会および日本臨床腫瘍学会が進めている「がん治療専門医制度」による専門医育成を予算措置も含めてサポートすること
② 上記の認定専門医を配置する医療機関に対しては、診療報酬での適正な加算をし、配置を促進させること
(3)検討会にがん患者団体の声を反映させるための要望
① 検討会が直接がん患者団体の声を聞く機会を設けること
② 上記機会を設けられない場合、少なくともこの要望書を紹介すること
平成15年5月26日
厚生労働省
坂口 力 大臣殿
質問書
拝啓
新緑の候、時下ますますご清祥の段、お慶び申し上げます。平素は厚生労働行政にのご尽力を賜り、厚くお礼申し上げます。
さて、既にご承知のことと存じますが、貴省は本年一月、福岡県と共に、九州大学医学部附属病院に共同指導に入られ、同病院が膀胱がんの治療として行っていたM-VAC療法の内の二剤、メトトレキサートとビンブラスチンが膀胱がんには、保険適応となっていないため、保険請求していた同病院に対して、貴省等は不正請求だと指導されました。
同病院は、とりあえず現在治療中の患者に対しては、保険適応外の薬剤費を病院が負担することで、治療を継続して下さっておりますが、今後は使用を縮小せざるを得ないと言っております。
私共が不思議に思いますのは、貴省は白書の中でも「EBMの推進」を謳われ、医薬局安全対策課が「抗がん剤適正使用のガイドライン(案)」を公表したりしております。
上記の九州大学病院が行っていた治療も、このガイドライン(案)の中で推奨されている治療でございます。
貴省は、一方でM-VAC療法を勧めておきながら、他方でそれを行った病院を不正請求だと取り締まるという明らかに矛盾した政策を行っております。
貴省は、EBMと保険制度に矛盾が生じた場合、どちらを重視するのでしょうか?
それはとりもなおさず、現在、命をかけてがんと闘っている患者にとっては、「生命」と保険とのどちらを優先するのかということです。
もしもEBMに日本の医療保険制度が追いついていないのであれば、それが判明した時点で、その解決策を探るべきであると当会は考えます。しかるに貴省は、製薬会社から申請がないため承認できないことを理由にして、長年に渡って、この問題の根本的解決に着手してきませんでした。その結果が、上記のようながん患者にとっての危機的状況を生み出したと私たちは考えております。
また、イレッサによる副作用死問題でも、貴省は「肺がんの化学療法に十分経験のある専門医が使用すること」と指導されましたが、日本には化学療法の専門医である臨床腫瘍医がいないことは、周知の事実でございます。
本年開催された「がん征圧議員連盟」総会でも、エビデンスのある抗がん剤が保険適応されていない問題と共に、臨床腫瘍医の不在問題を、深刻な問題として、貴省および文部科学省の役人、医学者、政治家の共通の認識としてとらえられていました。
しかるに、貴省などが現在まとめておられる「対がん10ヵ年戦略案」の中には、この臨床腫瘍医育成の問題が一言も触れられておりません。それは何故でしょうか?
いくら良い薬が早く認可されても、それを使いこなせる臨床腫瘍医がいなければ、イレッサのような問題がまた起こる可能性がございます。
がん治療の基礎中の基礎である世界的標準治療薬の早期認可と、臨床腫瘍医の育成。この二つの問題につきまして、大臣のご見解をお聞かせいただきたいと存じます。よろしくお願い申し上げます。
敬具
癌と共に生きる会
会長 橋本榮介
厚生労働省医薬局書記室からの回答(平成15年7月2日)
問 がん治療の基礎中の基礎である世界的標準治療薬の早期認可について
(答)
1・抗がん剤を含めて、薬事法に基づく新医薬品の承認は、申請者より提出された臨床試験に関する資料等をもとに、有効性、安全性等を審査して、当該新医薬品が有効であり、かつ安全性等に問題がないことを確認した上で与えられるものである。
2.厚生労働省としては、これまでも海外で乗認された必要な医薬品が迅速に承認されるよう、ICH(日米欧3極医薬品規制調和会議)ガイドラインに基づき、海外臨床試験データを利用し、必要最小限の国内臨床試験データによる承認申請を認めている。
また、国内外で評価が確立している適応外使用の医薬品については新たな臨床試験に関する資料を求めないなどの措置を講じるとともに、関係学会からの要望があれば、製造している企業に対して効能・効果の追加の申請を行うよう要請する等の取組を行っているところである。
3.こうした枠組を活用しながら抗がん剤の迅速な承認・保険適用に向け、努力してまいりたい。
問 臨床腫瘍医の育成について
(答)
1.昭和56年以来がんは日本人の死亡原因の第一位を占める重要な疾患である。近年の医学の進歩によりその治療は手術療法をはじめ放射線療法、化学療法、免疫療法、遺伝子治療法等多岐にわたっている。がんの治療法が目まぐるしく進歩する時代にあって、がん治療を専門に扱う医師の育成は重要な課題であると認識している。
2.臨床腫瘍医については関連学会でも認定専門医として育成することを予定しているが、第3次対がん10か年戦略の中でも課題の一つとして検討していく必要があると考えている。
(参考)日本臨床腫瘍学会の認定専門医制度
○2006年から申請を受け付け、2007年から認定する予定で現在準備中。
○資格要件
①医師国家試験合格後5年以上の臨床経験を有すること。
②本学会が認定する認定施設で指導医の指導のもとで所定の研修カリキュラムに従い2年以上の臨床腫瘍学の研修を行うこと。
③本学会が主催する教育セミナーに1回以上出席すること。
④がん化学療法に関係する論文および本学会での発表の実績があり、5年間に担当医としてがん薬物治療を行った30例以上の症例実績報告書を提出すること。
⑤本学会が施行する認定賦験に合格すること。さらに5年ごとの更新が必要であり、更新には一定の業績と学術集会または教育セミナーへの出席を義務づけている。
○年間100人程度を認定し将来的には1000人程度を養成する目標。
-がん治療に関する要望書-
日頃からがん医療の向上にご尽力をいただき、心から感謝申し上げます。
さて、がんは現在日本人の死亡原因の第一位にあげられ、年間30万人がこの病によって命を失っており、がんの予防や治療法の更なる向上が求められるところです。特に抗がん剤治療については、我が国は大幅に遅れており、地域格差も深刻であります。
昨年8月に島根県議会においては、地方でも地域格差なくがん治療が受けられる体制整備を図る旨の請願書が全会一致で採択され、その後、議会や県の強い働きかけにより、島根大学医学部が今春国立大学で初めて腫瘍科を設立することとなり、患者会として大変喜んでおります。このような地方の取り組みに加え、厚生労働省においても地域がん診療拠点病院事業の更なる推進や第三次対がん10カ年計画で盛り込まれたがんの専門医の育成などがん治療の地域格差是正に向けた更なる努力が望まれております。
また、今年に入り厚生労働省において「抗がん剤併用療法に関する検討会」が開始されました。検討会では、併用療法に用いられる抗がん剤であって、薬事法上効能が承認されていないものについて、エビデンスを収集し、効能の早期承認を図るとされております。患者会としては、こうした動きを高く評価し、大臣に感謝申し上げる次第です。しかしながら、年間10から15効能程度の承認では、国際レベルとの差がますます広がりかねません。抗がん剤の早期承認はもとより、併用療法に用いられる抗がん剤の効能の更なる早期の承認が期待されるところです。
以上申し上げたことから次について要望いたしますので、よろしくお取り計らいくださいますようお願い申し上げます。
1 地域格差を是正するため、地域がん診療拠点病院事業の推進及び抗がん剤の専門家の育成
2 抗がん剤の早期承認及び併用療法に用いられる抗がん剤の効能に関する更なる早期承認
平成16年1月27日
癌と共に生きる会
会長 佐 藤 均
厚生労働大臣 坂 口 力 殿
平成16年1月27日、坂口大臣の発言内容
坂口大臣:(前略)それから地方の問題でございますが、これはどこまでを専門医というかということにもよります。まあしかし、このがんの薬なんというのは、非常に先端的な医療と申しますかね、次々と新しくなっていく話しなものですから、先端医療のことを十分に勉強しておる人でないと、十分に使いこなせないということがあるわけですね。薬だから誰が飲ましても、誰が注射しても同じじゃないのと、こう言いますけどもなかなかそうはいかない。
私も地方、私三重県でございます。私の方がもっと遅れておると思いますが。常に私もそう思うんですね。地元のどっかに良い先生ありませんかとこう言われるわけですが、はたと困るわけです。それでがんセンターなんかに行きますと、もう一年先まで詰まってますと言われてですね、がんの患者さん、一年待ってくれって言ったって無理な話でありまして、外来で行って診てもらうのだけ診てもらって、まあこういう風に地元でやってもらってほしいとかいうことでやってもらうとかいうことを続けているわけです。
それにいたしましても、ここの所のレベル(格差)を何とか縮小していくことを考えないといけないんだと思いますね。がんセンターでも、地方のがんセンターと、東京のがんセンターとでは格差があるとこう言われるわけであります。その辺の所をどう埋めていくか、これはそれぞれの地域におみえになるがんを担当している先生方に研修して頂く以外に方法はないんだと。私は研修して頂けば、能力は十分にお持ちの先生方が地方にもおみえになっていると思いますが・・・最新の所を常に研究して頂くということをですね、もう少し制度的にやっていかないといけないのかなという風に率直にそう思っております。
従いまして、日本だけではなくて、外国からの先生にも来てもらい、最先端で取り組んでいる人たちがどういう風に今やっているかということの勉強をやってもらうということをですね、ぜひそういう会を毎年できる様にやらないといけないと思っている最中でございます。
今日皆様方がおみえ頂きまして、そのことをぜひ実現して頂きたいという風に思いました。そうすればかなり地方のレベルが・・・そんな特別な医療機器が必要なものばかりではないと思うんですね。必要なものは例えば、レントゲンの関係でありますと、新しい中性子使うとか何使うかとなって参りますと、これはどこでもできるというわけにはちょっと参りませんけども、そうではなくてもかなり僕は進むんじゃないかと思っていますので、そこはそういう風なことで、絶えず研修を続けて頂けるような制度を作って、そしてそれぞれの地域でやって頂くという風にぜひしたいと思っております。
文部科学大臣
河村 建夫 殿
平成16年5月23日
癌と共に生きる会
会長 佐藤 均
臨床腫瘍医の育成に関する要望書
日頃から我が国の教育、文化の発展と向上の為に御尽力頂き、心から感謝申し上げます。
さて、国民の最大の関心事である自分と家族の健康を守るという事に目を向けますと癌は昭和56年以来死亡原因の第一位、今や二人に一人が癌になるといわれ、高齢化社会の進行に伴い、その数はますます増加の傾向にあります。その為、癌の予防や治療法の向上が強く求められています。
日本の癌医療は、手術においては世界のトップレベルといわれる一方、抗癌剤治療を必要としている何十万人もの進行癌患者は安心して治療を受けられる場を見つけることが出来ず途方に暮れ、癌難民となっております。放射線治療、抗癌剤治療に長けた医師の育成が急がれるところです。
諸外国に比べ大幅に遅れていた抗癌剤の承認及び併用療法に関しても、今年に入って検討会が開始され大変喜ばしく思っておりますが、医療に最も求められるものは、これを行う「人」であります。様々な治療法がある中、医師と患者が話し合うことで、その人個人に一番良い医療をアドバイスし、全身管理が出来なければ成りません。
しかし、現在、医学教育の場では腫瘍医学の取得すべき項目が臓器横断的で従来の講座制にそぐわない為、学生が「臨床腫瘍学」と向き合う事はほとんどありません。また、癌の生物学的知識から抗癌剤の使い方、高度先進医療(放射線療法他)を含んで、全身管理をトータルに豊富に教育するシステムが欠如しており、卒前・卒後を結ぶ一貫した臨床腫瘍医教育システムがありません。
臨床腫瘍学は、医学の総合性と社会性を広く教育できる場として現代医療の中で最も重要な分野であります。
以上申し上げたことから、次について要望致しますので、宜しくお取り計らい下さいますよう御願い申し上げます。
(1) 全国の大学の医学部に「臨床腫瘍学」の講座を設け、現代医療における一分野として系統的な教育を行う。(進行癌患者への化学療法、放射線療法等に長じた医師の育成を図るため)
(2) 大学医学部卒業後の医師国家試験に、抗癌剤の使い方等を含む「臨床腫瘍学」としての出題を盛り込む。
(3) 研修医は臨床腫瘍学、もしくは緩和ケアアプローチを学ぶ事。
(4) 文部科学省、厚生労働省の連携のもと、大学医学部に付属の癌センターを設立し、卒前卒後の一貫した教育システムをつくる。
文部科学大臣
河村 建夫 殿 平成16年5月24日
市民のためのがん治療の会
代表 會田 昭一郎
放射線治療医の育成並びに放射線治療の基礎知識普及に関する要望書
日頃から我が国の教育、文化の発展と向上の為に御尽力頂き、心から感謝申し上げます。
さて、今やがんは「治ればいい」から、「高いQOLを維持しながら社会復帰する」時代です。このような状況を踏まえ、「市民のためのがん治療の会」は、次の2点を要望いたしますので、よろしくご検討いただき政策等に盛り込まれますようお願いいたします。
(1) 放射線腫瘍医を多数育成できるような医学部教育のみなおしと研修制度の改革
(2) 放射線治療に関する国民の理解を深めるための啓発事業の推進
例えば舌がんの場合、切除手術をすれば、治療後の会話や経口摂取に支障を来たすことがあります。また前立腺がんの手術をすると、性機能や排尿障害が生じることが多いといわれています。が、日本では現実にどちらのがんも、ほとんど手術が行われています。放射線治療は切らずに済むため体への負担が少なく、治療期間も短く、費用も少なくて済むという優れた特性をもちながら、放射線治療についての知識を十分有する医師がきわめて少ないため、患者は治療法の選択肢の中に放射線治療を加えて考えることが困難な状況です。
体の負担が少なく、短期間に低廉な治療ができることは、今後、団塊の世代ががん年齢に到達することを考えると、放射線治療に対する需要が増大せざるを得ません。医師の育成には長期間かかることは申し上げるまでもないことですので、対策が急がれます。
加えて現在、特定の患部部位に専門分化した臨床医とは異なり、放射線腫瘍医は全身のがんを横断的に診ており、放射線腫瘍医によるセカンドオピニオンを受けることは患者にとって大いにメリットがあります。こういう側面からも、現在約500名程度でしかない放射線腫瘍医を多数育成することは焦眉の急と申せましょう。
具体的には医学部教育カリキュラムを見直し、講座、研修等の改革を行うと共に、医師国家試験にも放射線治療関連出題を増やす、地方癌センターのような多くの癌治療を行っている現場での教育研修の充実などをまず考えるべきです。
ところで唯一の被爆国であるわが国におきましては、放射線に対する特有の忌避観、恐怖感等があります。一方、放射線治療は、近時のIT技術を中心とする技術革新の恩恵を最も強く受けており、その最先端技術の発展はめざましいものがあります。こうした情報について国民に十分理解して頂くため、一案ですが科学技術推進機構のサイエンスチャンネルなどでこれらの情報提供を行うことは、原子力の平和利用の見地からも重要な施策と思料いたします。