京都大学大学院の福島雅典教授(薬剤疫学)のご好意により、教授が作成された、2001年2月現在日本で未承認または保険適応外のために使えない「癌に対する標準治療薬並びに二次薬」の一覧表を以下に転載致します。
赤字:日本では未承認 青字:日本では適応外
表4-3:全身薬物療法に反応する癌の治療選択
(Current Medical Diagnosis&Treatment 40th Ed 2001,p76-78)
診断名 | 最新の治療選択 | 他の効果的な薬剤と処置 |
急性リンパ球性白血病 | 導 入療法:併用化学療法。成人:ビンクリスチン、プレドニゾン、ダウノルビシン、およびアスパラギナーゼ。強化療法:多剤交代化学療法。若年者、高リスク疾 患または二次寛解にある場合は、同種骨髄移植。全脳放射線照射を併用して、または併用なしに中枢神経系予防のためのくも膜下へのメトトレキサート投与寛解 維持療法:メトトレキサート、チオグアニン。 | ドキソルビシン、シタラビン、シクロホスファミド、エトポシド、テニポシド(VM-26)1、アロプリノール2、自家骨髄移植 |
急性骨髄性白血病 | 導入療法:シタラビン+アンスラサイクリン(ダウノルビシン、イダルビシン)の併用化学療法。前骨髄性白血病にはイダルビシンとトレチノイン。強化療法:高用量シタラビン。高リスク疾患または二次寛解にある場合、自家(パージングの有または無)または同種骨髄移植。 | ミトキサントロン、イダルビシン、エトポシド、メルカプトプリン、チオグアニン、アザシチジン1、アムサクリン1、メトトレキサート、ドキソルビシン、トレチノイン、アロプリノール2、白血球除去、プレドニゾン |
慢性骨髄性白血病 | ヒドロキシウレア、インターフェロンα。若年者への同種骨髄移植。臨床試験:STI 571;ホモハリングトニン | ブスルファン、メルカプトプリン、チオグアニン、シタラビン、プリカマイシン、メルファラン、同種骨髄移植、アロプリノール2 |
慢性リンパ球性白血病 | クロラムブシル+プレドニゾンまたはフルダラビン(治療を必要とする場合)。 | ビンクリスチン、シクロホスファミド、ドキソルビシン、クラドリビン(2-クロロデオキシアデノシン:CdA)、同種骨髄移植、アンドロゲン2、アロプリロール2 |
有毛細胞白血病 | クラドリビン(2-クロロデオキシアデノシン:CdA)。 | ペントスタチン(デオキシコフォルマイシン)、インターフェロンα |
ホジキン病(Ⅲ、Ⅳ期) | 併用化学療法:ドキソルビシン(アドリアマイシン)、ブレオマイシン、ビンブラスチン、ダカルバジン(ABVD)またはメクロレタミンなしでの代替併用療法。高リスク患者や再発患者への自家骨髄移植。 | メクロレタミン、ビンクリスチン、プレドニゾン、プロカルバジン(MOPP);カルムスチン、ロムスチン、エトポシド、チオテパ、自家骨髄移植 |
非ホジキンリンパ腫(グレードが中等度または高度) | 併用化学療法:組織分類に基づいて、しかし通常はシクロホスファミド、ビンクリスチン、ドキソルビシン、プレドニゾン(CHOP)を含む他の薬剤併用または非併用。高リスクの初回寛解期または初回再発患者における自家骨髄移植。 | ブレオマイシン、メトトレキサート、エトポシド、クロラムブシル、フルダラビシン、ロムスチン、カルムスチン、シタラビン、チオテパ、アムサクリン、ミトキサントロン、同種骨髄移植 |
非ホジキンリンパ腫(グレードの低度もの) | クロラムブシルとプレドニゾン、またはシクロホスファミド、ビンクリスチン、プレドニゾンまたはフルダラビン | リツキシマブ、併用化学療法、自家または同種骨髄移植 |
皮膚T細胞リンパ腫(菌状息肉腫) | 局所カルムスチン療法、電子線療法、光化学療法 | インターフェロン、併用化学療法、デニロイキンジフチトクス(ONTAK)、タルグレチン |
多発性骨髄腫 | 併用化学療法:メルファランとプレドニゾン、またはメルファラン、シクロホスファミド、カルムスチン、ビンクリスチン、ドキソルビシンとプレドニゾン。初回の完全または部分寛解患者への自家骨髄移植。予後の悪い若年患者への同種骨髄移植。 | エトポシド、シタラビン、インターフェロンα、デキサメタゾン、自家骨髄移植 |
ワルデンシュトレ-ム型マクログロブリン血症 | フルダラビンまたはクロラムブシルまたはシクロホスファミド、ビンクリスチン、プレドニゾン。高リスク若年患者への同種骨髄移植 | クラドリビン、エトポシド、インターフェロンα、ドキソルビシン、デキサメタゾン、血漿除去、自家骨髄移植 |
真性赤血球増加症(真性多血症)本態性血小板増加症 | ヒドロキシウレア、多血症に対する瀉血 | ブスルファン、クロラムブシル、シクロホスファミド、インターフェロンα、放射性リン32P |
小細胞肺癌 | 併用化学療法:シスプラチン+エトポシド姑息的放射線療法 | シクロホスファミド、ドキソルビシン、ビンクリスチン |
非小細胞肺癌 | 進行期:シスプラチン、ビノレルビン限局期:シスプラチン、ビンブラスチン | ドキソルビシン、エトポシド、マイトマイシン |
頭頚部癌 | 併用化学療法:シスプラチン+フルオロウラシル | メトトレキサート、ブレオマイシン、ヒドロキシウレア、ドキソルビシン、ビンブラスチン |
食道癌 | 併用化学療法:フルオロウラシル、シスプラチン、マイトマイシン | メトトレキサート、ブレオマイシン、ドキソルビシン、マイトマイシン |
胃・膵臓癌 | 胃:エトポシド、ロイコボリン2、フルオロウラシル(ELF)。膵:フルオロウラシルまたはELF、ゲムシタビン | カルムスチン、マイトマイシン、ロムスチン、ドキソルビシン、ゲムシタビン。ドキソルビシン、メトトレキサート(膵)、シスプラチン(膵)、胃癌に対して併用 |
大腸・直腸癌 | 大腸:フルオロウラシル+レバミゾール(補助療法)またはロイコボリンおよびイリノテカン(進行期)直腸:フルオロウラシルと放射線療法(補助療法) | イリノテカン、メトトレキサート、マイトマイシン、カルムスチン、シスプラチン、フロクスウリジン |
腎臓癌 | フロクスウリジン、ビンブラスチン、IL-2、インターフェロンα | インターフェロンα、プロゲスチン、FUDR注入、フルオロウラシル |
膀胱癌 | 膀胱内BCGまたはチオテパ、併用化学療法;メトトレキサート、ビンブラスチン、ドキソルビシン(アドリアマイシン)、シスプラチン(M-VAC)またはCMVのみ | シクロホスファミド、フルオロウラシル、膀胱内バルルビシン |
精巣癌 | 併用化学療法:エトポシド+シスプラチン高リスクまたは再発例には自家骨髄移植 | ブレオマイシン、ビンブラスチン、イホスファミド、メスナ、カルムスチン、カルボプラチン |
前立腺癌 | エストロゲンまたはLHRHアナログ(リュ-プロリド)+抗アンドロゲン(フルタミド) | ケトコナゾール、ドキソルビシン、アミノグルテチミド、プロゲスチン、シクロホスファミド、シスプラチン、エストラムスチン、ビンブラスチン、エトポシド、スラミン1;PC-SPES;エストラムスチン・リン酸塩 |
子宮内膜癌 | プロゲスチンまたはタモキシフェン | ドキソルビシン、シスプラチン、フルオロウラシル、イホスファミド |
卵巣癌 | 併用化学療法:パクリタキセル+シスプラチン/カルボプラチン | ドセタキセル、ドキソルビシン、トポテカン、シクロホスファミド、ドキソルビシン、エトポシド |
子宮頚癌 | 併用化学療法:メトトレキサート、ドキソルビシン、シスプラチンおよびビンブラスチン;またはマイトマイシン、ブレオマイシン、ビンクリスチンおよびシスプラチンと放射線療法 | カルボプラチン、イホスファミド、ロムスチン |
乳癌 | 併用化学療法;腋窩リンパ節陽性例にはシクロホスファミド、トキソビシン、フルオロウラシルと連続的パクリタキセル、またはシクロホスファミド、メソトレキサート、フルオウラシル、エストロゲン/プロゲステロンレセプター陽性腫瘍にはタモキシフェン | トラスツズマブ(ハーセプチン)と化学療法の併用、パクルタキセル、ドセタキセル、エピルビシン、ミトキサントロン、トポテカン、カペシタビン、ビノレルビン、チオテパ、ビンクリスチン、ビンブラスチン、カルボプラチンまたはシスプラチン、プリカマイシン、アナストロゾール、レトロゾール、エクセメスタン、トレミフェン、プロゲスチン、アミノグルテチミド |
繊毛癌(栄養膜性新生物) | メトトレキサートまたはダクチノマイシン(または併用)+クロラムブシル | ビンブラスチン、シスプラチン、メルカプトプリン、ドキソルビシン、ブレオマイシン、エトポシド |
甲状腺癌 | 放射性ヨウ素(131I) | ドキソルビシン、シスプラチン、ブレオマイシン、メルファラン |
副腎腫瘍 | ミトタン | ドキソルビシン、スラミン1 |
カルチノイド(類癌腫) | フルオウラシル+ストレプトゾシンにインターフェロンα併用または非併用 | ドキソルビシン、シクロホスファミド、オクトレオチド、シプロヘプタジン2、メチセルジド2 |
骨原性肉腫 | 高用量メトトレキサート、ドキソルビシン、ビンクリスチン | シクロホスファミド、イホスファミド、ブレオマイシン、ダカルバジン、シスプラチン、ダクチノマイシン |
軟部組織肉腫 | ドキソルビシン、ダガルバジン | イホスファミド、シクロホスファミド、エトポシド、シスプラチン、高用量メトトレキサート、ビンクリスチン |
悪性黒色腫 | ダカルバジン、インターフェロンα、IL-2 | カルムスチン、ロムスチン、メルファラン、チオテパ、シスプラチン、パクリタキセル、タモキシフェン、ビンクリスチン |
カポジ肉腫 | ドキソルビシン、ビンクリスチン、ビンブラスチンと交代またはビンクリスチン単独、姑息的放射線療法 | インターフェロンα、ブレオマイシン、エトポシド、ドキソルビシン |
ウィルムス腫瘍(小児)3* | 併用化学療法:外科手術および放射線療法後にビンクリスチンとダクチノマイシン、ドキソルビシン併用または非併用 | シクロホスファミド、メトトレキサート、エトポシド、シスプラチン |
神経芽細胞腫 | 併用化学療法:シクロホスファミド、シスプラチン、ビンクリスチン、ドキソルビシン、ダカルバジンのバリエーション | メルファラン、イホスファミド、自家または同種の骨髄移植 |
1 臨床試験中の薬剤。資格のある専門医、NCI(米国立癌研究所)および正規の臨床試験グループによって認定された施設で治療可能
2 支持療法薬;非腫瘍破壊性
3 これらの腫瘍は一般的には最初に外科性手術によって、放射線療法併用または非併用、補助化学療法併用または非併用で治療される。 転移疾患に対しては、姑息的放射線療法の役割は、化学療法のそれと同様に重要である
* 39thEd 2000,p86.より転記