平成15年8月2日
厚生労働大臣
坂口 力 殿
拝啓
平素は医療行政並びに健康・福祉行政にご尽力いただき有難うございます。今後も今以上に充実した厚生行政の実行により、日本が国民にとって少しでも生活しやすい国となる事を大いに期待を致しております。
さて、貴省は、平成15年7月17日付でチロシンキナーゼへの特異的な阻害作用を示す分子標的薬のメシル酸イマチニブ(商品名:グリベック)について、消化管間葉腫瘍(GIST)への適応拡大を承認いたしました。
このメシル酸イマチニブは、慢性骨髄性白血病(CML)治療薬として日本では2001年12月から発売されている薬です。
GISTへの効能拡大申請は今年1月に行われており、申請から半年のスピード承認となりました。
2002年4月24日の坂口大臣との会見の中で、『諸外国の優秀な薬については半年以内に導入を行う』が実現して、患者会としても歓迎の声で迎えております。
しかし一方で、 B細胞性悪性リンパ腫治療薬として世界最初のモノクローナル抗体となったB細胞性悪性リンパ腫治療薬リツキサンのように、昨年5月10日中・高悪性度適応拡大申請を厚生労働省へ提出されオーファンドラッグの指定を受けたにも係らず、未だに承認されておりません。
発売元によりますと、貴省より追加のデータ等を要求され、その返信までに要した時間の累計は3ヶ月半と聞いております。その時間を差し引いたとしても、1年の審査期間は終了に近づいております。
がんのような致死的な疾患に対する新薬の場合、米国においてはFDAが申請受理後6ケ月以内に審査の結論を出すことが義務付けられています。また、日本においてもオーファンドラッグの審査期間は1年が目処とされています。
私共が不思議に思いますのは、オーファンドラッグ(稀少疾患医薬薬の優先審査)に指定されるという事は、他の審査より優先して、1年以内に結論を出すという事ですが、既にこの約束は守られそうにありません。
そして貴省に確認したところ、1年を過ぎても何らペナルティは無いという事でした。
私共と致しましても、オーファンドラッグの早期認可を望む立場から関係者に対するヒアリングを試みて参りましたが、「認可されない」理由および背景について明らかにされてはおりません。
この稀少疾患医薬薬の認可の遅れは、間違いなく多くの稀少疾患患者の救命および延命の可能性を奪っております。こうした優れた新薬の開発成果は全ての人の財産であり、如何なる理由があるにせよ、監督官庁、企業あるいは病院のいずれの団体においても、その個別の理由でもって、患者がその成果を享受するのを妨げてはなりません。
半年以内で投入される薬がある一方で、延滞している薬がある理由が分かりません。
それらの審査過程は公開されておらず不透明であることも、薬の認可を待ち望む患者を不安に陥れております。
今後はこのような問題が無くなるためにも、今回の問題の原因を明確にしする必要を感じています。
そこで次の質問をいたします。
1 なぜオーファンドラッグ(稀少疾患医薬薬の優先審査)指定なのに、明確な根拠がなく1年以上遅れている物があるのでしょうか? 原因を教えてください。
2 薬を待ち望む患者のために、もう少し審査過程を透明化できないものでしょうか?現状ではどのように優先審査をされているのか、全く国民には分かりません。
3 審査期間内に結論を出す事を義務化できないでしょうか?
4 坂口大臣の「諸外国の優秀な薬については半年以内に導入を行う」という政策は、
全ての薬に対していつ頃までに達成されますか?
以上の患者さんからの要望事項をあらためてお伝えし、要望の緊急性および重要性を是非ご理解の上、大臣のご意見を今月の20日頃までにお聞かせいただきたいと存じます。
よろしくお願い申し上げます。
敬具
NPO法人『日本がん患者団体協議会(JCPC)』
理事長 山崎文昭